6.各手技のコツ

①肩の屈曲のコツ

川平法は習得するまでに少し練習が必要です。

そして習得して実際に使ってみて結果を出すのにはちょっとしたコツが要ります。

 

各手技のちょっとしたコツを書いてみます。

 

まずは肩の屈曲です。

 

肩の屈曲は肩の筋肉を叩いて刺激します。

その叩き方が重要です。

 

叩いたとき筋肉がピクンとすることが必要です。

ピクンとするのは伸張反射がおこっているからです。

 

それが引き金となって肩を動かすことができるのです。

 

強く叩く必要はありません。

でもスピードが必要です。

スピードがないと反射がおこりません。

 

反射をおこしたいので、つい強く叩いてしまいがちです。

そうすると肩を痛めてしまいますので注意してください。

 

もうひとつ大事なことは叩く場所がずれないようにしなければいけません。

 

叩くたびに違うところを叩いていたのでは毎回違う筋肉を働かせていることになります。

 

非常に効率が悪くなります。

 

また運動方向と使う筋肉に狂いが生じて肩を痛めてしまいます。

 

肩はとても痛めやすいので気をつけてやってください。

②肘の屈曲伸展のコツ

肘の屈曲伸展のちょっとしたコツを書いてみます。

 

この技はまず介助者が大変です。

手の使い方がとてもむずかしいです。

よく練習して体で覚えてください。

そして体で覚えたとして話を進めます。

 

この技の最も重要なところは最初のクイックストレッチです。

手首を持ってくいっとひねるやつです。

 

これが甘いと患者さんがほとんど自分ひとりで動かしはじめなければいけません。

そうすると腕全体が硬くなってしまいます。

曲げたら伸びないし伸ばしたら曲がらないようなことがおこります。

ようするにがんばりすぎるわけです。

 

患者さんが楽にスッと動かしはじめることができるようにしてあげてください。

 

ただし強くひねらないでください。

「軽く速く」です。

 

逆に介助者が助けすぎることもよくあります。

 

介助者がうまくなればなるほど自分ひとりでやってしまうのです。

患者さんにとって他動運動になってしまいます。

これは脳の学習がまったくおこりません。

 

肘はそんな両極端がおこりやすいので注意しましょう。

③前腕の回内回外のコツ

前腕の回内回外のちょっとしたコツです。

 

この運動は坐った姿勢で行います。

肘を90°屈曲した肢位から手のひらを上に向けたりしたに向けたり、肘から先をひねってもらいます。

 

促通は2種類の反射でおこないます。

 

まずクィックストレッチです。

 

手のひらを上に向ける(回外)時は、その前に手のひらを下に向ける(回内)方向に軽くくぃっとひねります。

手のひらを下に向ける(回内)時は、その前に手のひらが上に向く(回外)ように人指し指の先でトンッと叩きます。

 

手のひらが思う方向に回転し始めたら、第2の反射です。

 

手のひらを上に向ける(回外)時は、前腕の外側を親指でこすります。

手のひらを下に向ける(回内)時は、前腕の内側を中指でこすります。

 

これら2種類の反射のうち、どちらかというと、こする方が重要だと思います。

 

自然に手のひらが回転してしまうような場所をさがして、ていねいにこすってください。

これがうまくいかないと、せっかく回転し始めた手のひらが途中で止まってしまいます。

止まってしまうと、脳は学習できません。

回転が最後まで止まらないようになるべく長くこすってください。

 

それから、手のひらを回転させるのにはそんなに力は要りませんから、くれぐれも楽に動かすようにしてもらってくださいね。

④手指伸展と手関節背屈のコツ

これもむずかしい技ですよね。

介助者の身体の運動学習が相当必要です。

運動学習できたとして話を進めます。

 

ポイントはやはり促通です。

 

この技では2種類の伸張反射を使っています。

 

まずは四指の先端をつまんでいる介助者の示指と中指で指の関節を引っ張って反射を加えます。

 

その次に介助者は母指で小指側の手の甲をタッピングします。

 

標準的な方法では、この2種類の伸張反射のうち、第1の反射の方が強調されます。第2の母指でのタッピングはタップするというより軽く押すぐらいで結構です。

 

患者さんによっては、指の関節を伸ばすのはうまいが指の先を上に挙げてくるのが拙劣な方がいます。

 

そういう方には、第1の反射を弱めに使って、第2の反射でタッピングを強調して指の先が手首ごと挙がってくるように行います。

 

この技も慣れてくれば慣れてくるほど、介助者がひとりで動かしてしまう(他動運動)になりやすいので、常に患者さんが動かしてくれているかどうかを感じながらおこなってください。

⑤股関節の外転のコツ

この技は下肢においては準備運動的に用いられる技です。

 

お尻の外側の筋肉である中殿筋を働かせる手技であると同時に、内側の内転筋の緊張を緩める技です。

 

内側の内転筋は脳卒中片麻痺では、痙縮がおこりやすく、緊張が高まり硬くなりやすい筋肉です。

この筋肉が硬ければ、股関節に行う川平法がすべてうまくいきません。

 

よって一番はじめにこの手技を使って、内転筋をやわらかくしておきたいのです。

 

この手技は、股関節を外転する(横に開く)のは患者さん、内転する(開いたのを元に戻す)のは介助者が行います。

 

それが大切なポイントになります。

 

患者さんが自分で内転(元に戻す)してはいけません。

患者さんが自分で動かしてしまうと、内転筋の痙縮はいつまでたってもとれません。

 

それどころがますます硬くなっていってしまいますよ。

⑥股関節の伸展外転・屈曲内転のコツ

この技は下肢における2番目の技です。

 

歩行において下肢を振り出すために股関節の前後の筋肉を使う練習です。

 

この手技は、患者さんは上下に往復運動で動かしてもらいます。

以前お話した股関節の外転とはちがいます。

股関節の外転は、下肢を横に開くのは患者さん、開いたのを元に戻すのは介助者がおこなっていました。

今回の股関節の伸展外転・屈曲内転は、往復とも患者さんが動かして、介助者も往復とも助けます。

 

介助者は、下肢が下向きに動くときは足が重力のみで動かないように少し抵抗を加えます。

下肢が上向きに動くときは少し助けます。

 

ポイントは2つ。

 

ひとつは上下に下肢が動く間、ずっと股関節を外旋位(あぐらをかくような肢位)に保つこと。

 

ふたつ目は促通のために反射のタイミングです。

 

下向きに動くときは動いてる間中、殿筋(お尻の筋肉)を指先で圧迫してください。

上向きに動くときは動き始める前に鼠径部(下肢のつけ根の前面)を親指でこすってください。

 

反射はこのタイミングがもっとも促通効果があります。

 

あとなんといっても下肢が重いですよね。

介助者の方はとても腕が疲れると思います。

 

そういう場合は50回おこなうのを25回ずつに分けて2回繰り返すようにしてください。

またクッションの上で行い、運動範囲を小さくしてみてください。

 

女性には介助するのが大変な技ですが、工夫してがんばってください。

⑦股関節の伸展外転外旋・屈曲内転外旋のコツ

この技は股関節においてもっとも大切な運動を練習しています。

 

先に述べた股関節の外転、股関節の伸展外転・屈曲内転はこの技の準備運動と言ってもよいぐらいです。

 

歩くために必要な股関節の要素がすべて入っています。

ですから通称「下肢の複合」と呼んでいます。

 

うまくこの技を行うポイントは二つです。

 

まず一つ目は、伸展外転外旋の時です。

 

伸展外転の時に股関節だけで随意運動ができるようにすることです。

膝がいっしょに伸びてしまってはいけません。

膝がいっしょに伸びてしまうということは、患者さんは、膝を外に開く随意運動をしているのではなく、足を蹴る随意運動していることになります。

足を蹴ってはいけません。

 

これを覚えてしまいますと歩く時に、足をつっぱってしまうようになってしまいます。

足が前に出なくなりますよ。

 

二つ目は、屈曲内転外旋の時です。

 

屈曲内転の運動の初めに介助者は促通(反射の誘発)をします。

すばやく股関節の内旋を入れて外旋の運動を誘発します。

 

この促通がうまくいかないと、患者さんはまったく自力で運動を開始することになり、力が入りすぎてしまいます。

結果、どんどんと股関節が硬く固まっていきます。

これも歩く時に足が前に出なくなりますよ。

 

以上二つに気を付けて、やってみてください。

 

この手技も介助者に技術が必要です。

 

たくさん練習して慣れてください。

⑧母指の伸展外転

手指の運動はもっとも川平法らしいオリジナルな技といえます。

 

指の1本1本をこれほどていねいに繰り返し動かす運動療法は過去現在においてほかには存在しません。

 

動きやすくするための促通も非常に工夫されています。

 

手関節を掌屈位(手のひら側に曲げる)にして筋を伸長して反射がおこりやすくしています。

 

そして伸張反射という反射を二重に重ねます。

 

母指の伸展外転では、母指の先端を曲げてから(ひとつ目)、根元を押します(ふたつ目)。

 

母指の伸展外転の技の一番のポイントは、この伸張反射を二重に重ねるところです。

 

ある程度の速度をもっておこないます。

ゆっくりしてしまっては、伸張反射がおこりません。

 

そしてひとつ目の反射を解かないでふたつ目に反射を重ねることです。

母指を曲げた力をそのままにして根元を押すことです。

根元を押したと同時に母指を曲げた力を解放してしまったら、反射は重なりません。

 

ここが手指でもっともむずかしくて、大切なところです。

 

療法士も習得するのに苦労するところです。

 

どうしてもうまくいかなかったら、霧島に研修に行ったことのある療法士に教えてもらった方がよいでしょう。

⑨母指の掌側外転のコツ

母指の掌側外転は、母指を縦に開く技です。

 

この技のポイントを三つ述べます。

 

まず一つ目。

 

なんといっても介助者が薬指と小指で母指の根元の筋肉をタップする促通がむずかしいです。

 

薬指と小指がバラけないように縦にそろえて、根元の筋肉を指先で突きます。

こうして短母指外転筋という筋肉を促通します。

 

薬指と小指がバラけてしまい、タップする場所が少し内側にずれてしまうと、短母指屈筋という筋肉が促通されてしまいます。

 

そうすると母指の関節が曲がってしまいます。

これは望んでいる運動とは違います。

 

よくやってしまうミスです。

 

二つ目。

 

母指の根元の筋肉をタップした後、介助者は患者の母指を介助して動かします。

この時に介助しすぎて、まったくの他動運動になってしまうことが多いです。

患者さんの母指の運動が始まってから、追うようにしてついていく感じで介助してください。

 

三つ目。

 

母指の掌側外転の動きは、そんなに大きい動きではありません。

ですから患者さんががんばりすぎないようにしてください。

おもいきり母指を広げさせてはいけません。

おもいきり母指を広げさせると、手指の屈筋や手関節の屈筋まで働いてしまいます。

 

これも望んでいる運動とは大違いです。

 

以上三点に注意しておこなってください。

 

母指の掌側外転は地味な運動ですが、手の機能にとってはとても大切なものです。

 

がんばってください。

⑩示指・中指(環指・小指)の伸展のコツ

この示指・中指(環指・小指)の伸展も母指の伸展・外転と同様にもっとも川平法らしい技です。

 

以前にも述べましたが、指の1本1本をこれほどていねいに繰り返し動かす運動療法は過去現在においてほかには存在しません。

 

注意すべき点、まず一つ目。

 

筋を伸長して反射がおこりやすくするために、手関節を掌屈位(手のひら側に曲げる)にして固定して持ちます。

 

この持つのが意外とむずかしいのです。

 

示指の運動をしている間、手全体がグラグラと動いてしまったら、正しい運動ができません。

かと言って強く持ちすぎると、代償運動がおこっていてもわかりません。

弱すぎず、強すぎず、しっかりと固定して、患者さんが動かしやすくしてあげてください。

 

注意すべき点、二つ目。

 

母指と同様に、伸張反射という反射を二重に重ねるところです。

 

示指の先端を曲げてから(ひとつ目)、第2関節の根元を押します(ふたつ目)。

ある程度の速度をもっておこなってください。

 

中指は示指を乗り越えてやってください。

 

環指(薬指)は手を変えて、中指と同じやり方でやってください。

 

小指は手を変えて、示指と同じやり方でやってください。

 

この手技はある程度、指が伸ばせることができる方に有効です。

 

まったく指を伸ばすことができない方には「手指伸展と手関節の背屈」をやってください。

⑪股関節の屈曲伸展のコツ

股関節の屈曲・伸展は、麻痺側が上になる側臥位(横向きに寝た姿勢)で行う手技です。

この肢位で行う手技は川平法の中では比較的少ないです。

 

この手技のポイントはまずは介助者による足首の操作です。

 

股関節屈曲の最終域で足首を背屈(直角以上に立てる)し、股関節伸展最終域で足首を底屈(下腿と水平に寝かせる)します。

 

この操作をすばやく行うことによって、その力が股関節に伝わり、運動のきっかけを作るクイックストレッチになります。

 

このクイックストレッチがうまくいかないと、患者さんに大きな努力を強いることになります。

 

それからもうひとつのポイントは、膝の屈曲・伸展(曲げ伸ばし)を行わせないことです。

 

股関節屈曲のときに膝関節屈曲が、股関節伸展のときに膝関節伸展がいっしょにおこりやすいいのです。

 

これを行わせてしまうと、患者さんは、股関節を動かすときに常に膝がいっしょに動いてしまうことを覚えてしまいます。

 

そういうことを覚えてしまいますと、歩くときにうまく足が運べなくなってしまいますので注意しましょう。

 

膝関節はなるべく直角位に保持しましょう。

 

の手技も他の股関節の運動と同じく、介助者にとって、とても疲れる技です。

50回の回数を2回に分けたり、クッションを膝の間にはさんだりして、がんばってください。

⑫足関節の背屈のコツ

足の背屈の手技はみかけ以上にむずかしい技です。

 

促通には、母指によるタッピングや逃避反射(指の裏をコヨコチョするやつ)を用います。

これらの促通のうち、もっとも反応のよい方を使ってください。

 

重要な注意点を二つ。

 

1点目は、絶対に往復運動をさせないこと。

 

患者さんはリズミカルに足の背屈を行うために、ついつい底屈もやってしまいます。

 

このように往復運動をさせてしまうと、底屈の筋(下腿三頭筋)の方が強いため、だんだんと背屈が負けて出なくなってきます。

 

そしてあとには硬くなってしまった下腿三頭筋だけが残ります。

 

2点目は、うまく背屈だけがおこっていても、背屈の最中に上記の下腿三頭筋もいっしょに収縮していることがあります。

 

これもだんだんと背屈が負けて出なくなってきます。

 

そしてやはり硬くなってしまった下腿三頭筋だけが残ります。

 

このように足は背屈の運動を行う中で、底屈の運動が非常に入りやすいのです。

 

この点をくれぐれも注意しながら実施してください。

⑬体幹の側屈・回旋のコツ

クレヨンしんちゃんの「お尻歩き」はうまくできましたか。

うまくできないという方は、この手技をやってもらってください。

 

体幹の側屈・回旋です。

 

まず体幹の回旋から練習するとよいでしょう。

動きがわかりやすいと思います。

 

この技は数少ない体幹(胴体)の技です。

麻痺側を上にして横向きに寝て行います。

 

ポイントを2つ述べましょう。

 

1つは骨盤を後ろに引くクイックストレッチです。

 

軽くすばやくやってください。

 

骨盤が重いので、つい力強くやってしまいがちです。

 

強く引いてしまうとスピードも落ちますし、反射がうまく起こりません。

 

2つ目は指先を突き刺して、腹筋を刺激する方法です。

 

これもあまり強く行うと反射が起こりません。

 

そしてピクッと筋肉が収縮しやすい場所を探して刺激してください。

 

この手技とお尻歩きを併用すると、歩行が早くうまくなりますよ。