4.川平法の効果

①川平法の即効性

川平法には即時効果があります。

 

川平法は脳の運動学習ですので、運よく脳がすぐ覚えてくれたら、即時効果がみられます。

 

川平法を始める前に自分ひとりで動かしてもらいます。

川平法が終わった後に再び動かしてもらいます。

そうすると、明らかに動かなかったところが動きはじめたり、動く範囲が大きくなったりします。

 

それが即時効果です。

 

川平法の実施前後で比べるのがもっとも確実ですが、実は実施している最中でも即時効果がみられます。

 

川平法の動きをいっしょにしていて、

 ①動きが速くなる 

②動く範囲が大きくなる 

③硬かった筋がやわらかくなる 

④動きがスムーズになる 

⑤動きが均一になる 

といったことがみられます。

 

これらも即時効果です。

 

実は経験を積んだ療法士は、実施している最中に即時効果を感じています。

ですから川平法前後の変化が必ずあらわれます。

実施している最中に即時効果が出なければ、出るまでやります。

ですから必ず結果が出るわけです。

 

皆さんも川平法をやってみて、やっている最中にすこしでも上記の変化を感じたら、その手技は成功していると思ってください。

 

必ず貯金できていますよ。

②川平法の適応:川平法は軽・中度の麻痺によく効く

川平法は軽・中度の麻痺によく効くといわれています。

反対に重度の麻痺にはあまり効果がないといわれます。

 

それは川平法の治り方の特徴にあると思います。

 

川平法は脳の可塑性を利用して神経回路を強化していきます。

 

それは脳卒中片麻痺の方の残っている脳細胞をがんばらせているということです。

 

ですから残っている脳細胞の働きを35割増しにすると思ってください。

 

仮に軽度の麻痺では残っている脳細胞の働きが元の70%あるとしましょう。

それを3割増しにします。

そうすると21%もあがり91%になります。

 

重度の麻痺では残っている脳細胞の働きが20%しかなかったとしたら。

3割増ししても6%しかあがらず26%です。

 

同じ3割増しでもずいぶんあがり幅が違います。

 

到達点も91%と26%です。

 

片や100にもう少し、片やまだ20代。

ですから残っているものが多ければ多いほどよくなるように思えるのです。

③1㎝動くようになっただけで変わる日常生活動作

たとえばまったく動かなかった4本の指が動いたとしましょう。

1cm曲げ伸ばしができるようになったとしましょう。

何かが変わるでしょうか。

常生活動作が何かできるようになるでしょうか。

 

1cmぐらい動いても何も変わらないように思えます。

ところが変わっていきます。

ある患者さんが教えてくれたのです。

 

4本の指が1cmほど曲げ伸ばしができるようになると、ズボンのポケットに手を入れることができるようになったそうです。

そしてズボンの中に入っている折りたたんだ千円札を出すことができたそうです。

 

指がまったく動かなければ、ズボンのポケットの布地に指がひっかかってしまいます。

ましてや千円札を引き出すことなど、とてもできません。

 

私も以前はたった1cm動くようになっただけで、日常生活動作が変わるとは思っていませんでした。

だから指を1cm動かす努力をしていませんでした。

まったく申し訳ないことをしてきたと思います。

 

日常生活動作は1cm動くようになっただけで変わります。

 

皆さんもそれを励みにがんばってください。

④川平法の持続性

川平法を行うと、うまくいけばその場で変わります。

動かなかったものが動くようになります。

動く範囲が大きくなったりします。

それが即時効果です。

 

その効果はどのくらい持続するでしょうか。

 

はじめは長続きしません。

だんだん即時効果が薄れて、消えていきます。

 

早い方は数分で消えます。

だいたい23日すると消えていきます。

 

脳と筋肉との間の神経回路はつながったのですが、つながり方が弱いのです。

もっと回数を重ね、強化していかなければなりません。

 

以前に川平法の頻度は週2回必要と言いましたね。

即時効果が消える前に、また練習すると神経回路が強化されていきます。

 

そうして神経回路が強くなり、その動きが日常生活動作の中でも実演できたら、もう消えません。

 

ずっと持続します。

 

その動きはあなたのものになります。

⑤2015年脳卒中治療ガイドラインに川平法が掲載

「脳卒中治療ガイドライン2015年」というのが625日に発売になりました。

 

これは日本脳卒中学会が中心となり、日本脳神経外科学会、日本神経学会、日本神経治療学会、日本リハビリテーション医学会が協力する形で作られました。

 

「脳卒中の治療は、これを参考にしてやりなさい」というような日本の脳卒中治療の教科書のようなものです。

 

の中で、今回、川平法(促通反復療法)が掲載されました。

 

上肢機能障害に対するリハビリテーションの項目で、「軽度から中等度の患者に対して、促通反復療法が勧められる」と載っています。

 

これはグレードBといって、「行うよう勧められる」という推奨です。

 

脳卒中片麻痺の治療において、推奨された手技はこれまで多くありません。

 

川平法より少し前に開発されたCI療法ぐらいのものです。

 

まさに快挙と言ってよいと思います(まあ当然といえば当然ですが)。

 

これで“お墨付き” をいただいたと言ってよいでしょう。

 

川平法をお使いの皆様、受けられている皆様、どうか自信を持ってください。

 

“お墨付き”です。

⑥川平法で手足が動いていく:その第1段階は

川平法は、麻痺した手足を思いどおりに動かせるようになるのが究極の目標です。

 

ただしその目標は、「最小限の筋力で最大の運動を」ということが原理です。

 

目標に至るまでいくつかの段階を経て動いていきます。

 

川平法を行うと、麻痺した手足にまず動きが出てきます。

動かなかった手足がなんとか動くようになってきます。

 

これが第1段階です。

 

脳から送った命令である電気信号が、脳と筋肉をつないでいる神経を通って、ようやく筋肉に届いた状態です。

ここから、その運動を繰り返し、何回も電気信号を神経に通らせていき、神経を強化していきます。

そうすると電気信号が通りやすくなり、神経も大きく強くなっていきます。

 

そして第2段階に進んでいきます。

⑦川平法で手足が動いていく:その第2段階は

動かなかった手足がなんとか動くようになってきます。

それが第1段階です。

 

ゆっくりでもいいから、可動域いっぱい動くようにしましょう

がんばらないで楽に動かして、それができるようになったら第1段階達成です。

 

次に第2段階を目指していきます。

 

2段階は、スピードです。

 

じゎっとゆっくり動いていた手足の動きがだんだん速くなってくるはずです。

川平法をやっている最中、または直後に動きが速くなってきたら成功です。

 

その速い動きが自分のものになってきたら、第2段階達成です。

 

いつでもどこでもその速さが再現できるようになったら、次の段階は第3段階です。

⑧川平法で手足が動いていく:その第3段階は

川平法で手足が動いていく第3段階は協調性です。

 

手足が速く動くだけでなく、複雑にうまく動くということです。

各関節におけるいろいろな方向の運動ができること。

その運動を複数の関節をいっしょに動かして、組み合わせておこなえることです。

 

この頃から日常生活での動きがいろいろと目に見えて変わってきます。

こんなことができるようになった。

こんなふうにできるようになった。

ということです。

 

これが第3段階。

 

もちろん川平法をおこなっている最中も、動かしている関節のみならず他の関節にも注意しながらおこなってください。

 

そうすると第3段階達成が早くなります。

⑨川平法で手足が動いていく:その第4段階は

川平法で手足が動いていく過程。

 

1段階は、とにかく動く

2段階は、速く動く

3段階は、複雑にうまく動く

 

動くということの最後の段階(第4段階)は“力”です。

 

筋力です。

 

スプーンしか持てない手が、ペットボトルを持てるようになった。

 

このくらいですと、第3段階でも可能です。

 

しかしかばんを持ちたい。

もっと重たい物を持てるようになりたい。

 

これは第4段階です。

 

残念ですが、この第4段階になりますと、川平法では対応できません。

この第4段階になりますと、ちがう治療法が必要です。

川平法が対応できるのは第3段階までです。

 

川平法は神経路を強化する治療法です。

筋肉そのものを強化する治療法ではありません。

 

どんな治療法にも適応不適応があります。

 

お薬と同じですね。

 

よく理解して使っていきましょう。

⑩川平法の非適応:認知障害には

川平法は脳の可塑性を利用した運動学習です。

 

運動を学習するためには、自分で動かすことが必要です。

自分で動かそうとする意思が不可欠です。

 

そしてうまく動かすためには、介助者と協力することが必要です。

介助者の言うことを理解して、行動に移すということが必要です。

 

介助者の言うとおりにすれば、こういうふうになるという理解までは必要ないかもしれません。

とりあえず、介助者の言うとおりに行動できる、ということが必要です。

 

言うとおりにして、動かしていれば、それで脳は学習します。

動かすことの意味の理解までは要りません。

 

もちろん、動かすことの意味の理解までできていれば、よりはやく学習できると思います。

 

ですから、最低限、介助者の言うとおりに動かすことができる。動かそうとしてくれる、ということが川平法の適応の下限といえます。

 

介助者の言うことがわからない。そんな中重度の認知の障害があれば、川平法は成立しません。

 

中重度の認知障害は、川平法の非適応といえます。

⑪川平法の非適応:学習障害には

川平法は脳の可塑性を利用した運動学習です。

 

脳が運動を学習する能力があって、はじめて成立します。

 

脳卒中のあと、その能力が弱っていることがあります。

 

川平法を行い、介助者といっしょならできても、ひとりではできなかったりします。

ひとりで少しできたとしても、一晩寝て、次の日になればまったくできなくなっていたりします。

 

学習は寝ている間に行われます。

ですから、次の日にまったく残っていなければ、学習障害があるかもしれません。

 

もちろん、川平法がまったく通じないというわけではありませんが、効果は少し減るかもしれません。

 

時間がかかります。

 

根気よく継続するしかないと思います。

⑫運動努力を求めない治療はいい成績が出ない

「運動努力を求めない治療はいい成績が出ません」

 

川平和美先生のお言葉です。

 

脳卒中片麻痺の手足の麻痺の治療法にはいろいろなものがあります。

 

必ず行われるものに、関節可動域訓練やストレッチングと呼ばれるものがあります。

 

セラピストが患者さんの麻痺した手足の関節を動かしてくれたり、手足を動かすことによって筋肉を伸ばしてくれたりするものです。

 

これによって固まった関節がほぐれ、硬くなった筋がやわらかくなります。

 

そうすると、患者さんは手足が軽く動くようになった、大きくに動くようになったと感じます。

 

これは手足の麻痺がよくなったのでしょうか。

 

いいえ。

 

手足の麻痺自体はよくなっていません。

 

手足が動くのをじゃましていたものがなくなっただけです。

 

だから動かしやすくなっただけで、動かす能力がよくなったわけではありません。

 

脳卒中片麻痺の麻痺がよくなるには、脳の可塑性を利用した運動学習が必要です。

したがって患者さん自身が動かそうとする努力が必須です。

 

過去において、運動努力を患者さんに求めない治療はいい結果が報告されていません。

 

もちろん、川平法は患者さんに運動努力を求める治療です。

 

いい成績が報告されていますよ。