3.痙縮について

①川平法の大敵:筋の痙縮

脳卒中片麻痺の方の症状に痙縮というのがあります。

筋肉が無意識に勝手に収縮するのです。

 

これは元々だれもが持っている脊髄反射という反射が亢進して出現している状態です。

健康な時は大脳が脊髄をコントロールしているため、抑えられているのです。

大脳が損傷したため、抑えが効かなくなり、いつも出ているのです。

 

筋肉が意志とは関係なく収縮しているので、手足がいつも硬く固まっている感じです。

 

この状況では、本人が手足を動かそうとしても、思うように動きません。

 

例えば肘を伸ばそうとします。

肘を伸ばす筋肉に力を入れます。

ところが反対側の肘を曲げる筋肉が痙縮で硬くなっており、緩まないので肘が伸びません。

 

もうお分かりだと思います。

 

この痙縮は川平法の大敵なのです。

 

意図した自動運動が発現しないのです。

 

動かないのです。

 

動かなければ神経路の強化はできません。

 

ですから、まず痙縮を何とかしていかなければいけません。

 

その方法について次項から述べていきましょう。

②痙縮の治療:ストレッチング

痙縮の治療でもっともメジャーなものは、ストレッチング(伸張訓練)です。

痙縮のおこっている筋肉を伸ばすのです。

 

痙縮がおこり、筋肉が硬くなっている関節は、ある方向に曲がっているはずです。

手なら握ってしまって、手首も内がわに曲がっていると思います。

肘も曲がってしまって伸びないと思います。

 

それらの関節を逆方向にゆっくりと動かしてください。

そして伸ばした位置をキープしてください。

すると10秒ほどすると緩んでくるはずです。

 

ポイントはゆっくりと動かすことです。

速く動かすと逆効果です。

ますます硬くなってしまいます。

 

筋肉は速く伸ばされると、伸張反射がおこり収縮します。

ゆっくりと伸ばされると、腱紡錘のゴルジ装置が興奮し緩みます。

そんな性質を持っているのです。

 

ゆっくり伸ばして、緩むのを待ちましょう。

そうすると痙縮をおこしている筋肉はやわらかくなります。

 

ただし緩んでやわらかくなっている時間はほんのわずかです。

30分もありません。

ですから緩んでやわらかくなっている間に、川平法をやっちゃってください。

③痙縮の治療:振動療法

痙縮の治療で川平法と併用してよく使われるのは振動療法です。

 

むずかしいものではありません。

市販の家庭用の電動マッサージャーでできます。

我々が使っているのも市販の家庭用の電動マッサージャーです。

霧島でも同じものを使っています。

 

電動マッサージャーのヘッドを痙縮をおこしている筋に当ててください。

当てはじめはさらに硬くなります。

初期緊張性振動反射といいます。

 

でもずっと当てて置くと30秒ぐらいでゆるんできます。

その結果、はじめよりもやわらかくなります。

 

 これも筋肉の性質です。

筋肉は振動刺激によって、はじめ収縮し、のちに弛緩します。

 

前回述べたストレッチングよりも簡単かもしれません。

 

これもやわらかくなっている時間は30分ぐらいです。

 

やわらかいうちに川平法をしてください。

 

ただし直接に皮膚にあてて行うと摩擦熱で水ぶくれができてしまうことがあります。

服の上からおこなうか、タオルをあてがっておこなうのがよいでしょう。

 

電動マッサージャーは通販で比較的安価で買えますし、家庭で行うにはオススメです。

我々も通販で買っています。

ぜひお試しあれ。

④痙縮の治療:ボトックス療法

痙縮の治療で近年よく聞かれるものにボトックス療法があります。

 

ボトックス療法とはボツリヌス菌が作り出す蛋白質を有効成分とする薬を筋肉内に注射する治療法です。

 

ボツリヌス菌が作り出す蛋白質をボツリヌストキシンといいます。

 

ボツリヌストキシンには筋肉を緊張させている神経の働きを抑える作用があります。

 

そのためボツリヌストキシンを注射すると、筋肉の緊張をやわらげることができます。

 

つまり痙縮している筋に注射すると、痙縮がやわらぎます。

かたく収縮している筋肉がやわらかく緩むのです。

 

この治療は薬を筋肉に注射するものですから、専門の医師しかできません。

 

この治療の効果は通常34ヵ月続きます。

ストレッチングや振動療法に比べると非常に長く効いています。

しかしやはり徐々に効果は弱くなり、最後には消えてしまいます。

 

ですから薬が効いている間にリハビリをすることが大切です。

もちろんそのリハビリは川平法がもっともよいと思います。

 

ボトックス療法も川平法ととても相性がよい治療法といえます。

⑤痙縮を抑えるもっともよい方法は川平法

痙縮のある筋肉に川平法をやっていると、その場で筋肉がやわらかくなっていきます。

はじめ痙縮でかたくなっている筋肉がだんだんとほぐれてくる感じです。

 

実はこれは、筋肉がもともと持っている性質なのです。

 

ストレッチングのときに、筋はゆっくり伸ばすとゆるんでいくということを述べました。

 

あれとは違う性質です。

 

筋肉が収縮して関節を動かそうとするとき、反対の動きをする筋肉は自動的にゆるみます。

たとえば肘を伸ばそうとすると、肘を曲げる筋肉はゆるむのです。

ごく当たり前の仕組みです。

肘を伸ばそうとするときに肘を曲げる筋肉も収縮してしまったら、肘は伸びませんよね。

相反抑制といいます。

 

川平法をやっていると、この筋肉の性質が現れてきます。

肘を伸ばす運動をしていると、肘を曲げる筋肉がゆるんできます。

 

もうおわかりですね。

 

肘を曲げる筋肉に痙縮があれば、肘を伸ばす川平法をすればよいのです。

 

川平法によって痙縮がやわらかくなっても、しばらくするとまたかたくなります。

もちろん川平法をやめてしまえば、元の痙縮のかたさに戻ってしまいます。

 

しかし川平法によって、手足を自分ひとりで動かせるようになれば、この筋肉の性質をずっと使うことができます。

 

すなわち川平法で麻痺がよくなれば、痙縮も自分で自動的に抑えられるということです。

 

結局、痙縮を抑えるもっともよい方法は川平法ということでしょうか。