2.川平法の疑問

①川平法を習得するには?

川平法を習得するには4つの方法があります。

 

 1 本、DVDを見て独学する。

 2 鹿児島大学病院親和会が主催する1日講習会に参加する。

 3 霧島リハビリテーションセンターに研修に行く。

 4 霧島で研修を終えた療法士に教えてもらう。

 

1は一般の方、ご家族の方にもできる方法です。

 

本には一般向けと医療者向けがあります。

 

一般向けは、小学館から出ています。

決定版!家庭でできる脳卒中片マヒのリハビリ やさしい図解「川平法」

 

医療者向けは、医学書院から出ています。

片麻痺回復のための運動療法、促通反復療法「川平法」の理論と実際 第2

これにはDVDが付いています。

 

川平法の動きは実際とてもむずかしいです。

本だけでは、わかりにくいかもしれません。

まずDVDを見て、イメージをつかんでから、本を読んでいった方がよいかもしれません。

 

2は医療者の方しかできない方法です。

 

1年に数回、全国各地で1日の講習会がおこなわれています。

川平先生が全国を飛び回っています。

講習会は、医師、理学療法士、作業療法士の方に門戸が開かれています。

残念ながら、その他の医療従事者の方は参加できないのが現状です。

 

3も医療者の方しかできない方法です。

 

4つの中で、もっとも川平法を習熟できる方法といえます。

鹿児島県の霧島リハビリテーションセンターで、2週間あるいは4週間の実地研修をさせてもらえます。

寮を使用できますし、研修費も非常に安価です。

しかし申し込みが非常に多く、順番待ちの状態と聞いています。

 

4の方法は、縁とタイミングさえ合えば、実現可能かもしれません。

しかし川平法ができる療法士は非常に少ないので、めぐり会えるのがなかなか大変かも。

 

それぞれ一長一短がありますが、自分に合った方法で、習得していけばよいかと思います。

型だけなら、大体13ヵ月で習得できると思います。

 

がんばってみてください。

②川平法で麻痺が完全に治る?

川平法をおこなうと、麻痺していた手足が動くようになります。

でも完全に元の状態に治るわけではありません。

 

やはり限界があります。

 

それは脳の可塑性の限界なのです。

 

脳はそれぞれの脳神経細胞がおこなっていた仕事の形式を変えることができます。

たとえば手足を10個の脳細胞が動かしていたとしましょう。

脳卒中で1個死んでしまいます。

死んでしまった1個の細胞の仕事を残った9個の細胞でやります。

 

10個でしていた仕事を9個でします。

できますよね。

 

では3個死んでしまったら。

10個でしていた仕事を7個でします。

どうにかこうにかできるでしょうか。

 

じゃあ5個死んでしまったら。

10個でしていた仕事を5個でします。

今までの2倍の仕事になります。

ちょっと無理かも。

 

死んでしまった脳細胞の数によって回復の程度は違います。

また死んでしまった脳細胞のしていた仕事の重要度によっても回復の程度は違います。 

 

だから、だれもかれもみんなが麻痺する前の状態に完全に戻れるわけではないのです。

③川平法は週に何回したらいい?

川平法は脳の運動学習です。

 

ですから学習のための時間は多ければ多いほどよいです。

 

時間とは、回数×頻度×期間、です。

 

回数は50100回とお伝えしましたね。

 

次は頻度についてです。

 

通常、運動学習すなわちスポーツなどにおける技能向上を考えますと、週2回必要です。

もちろん毎日おこなった方がよいに決まっています。

 

川平法でも、毎日あるいは週5回おこなった場合に効果的であったという研究報告が多いです。

 

また週2回でも効果があったという報告もあります。

 

残念ながら週1回でよくなったという報告は、まだありません。

学習ですから、やはり間隔が空くと忘れていくのでしょうね。

どうやら35日以上、間隔が空くとよくないようですね。

 

あくまでも一般論として、お受けとめください。

④川平法はどのくらい続けたら効果が出る?

川平法は脳の運動学習です。

 

ですから学習のための時間は多ければ多いほどよいです。

 

時間とは、回数×頻度×期間、です。

 

回数は50100回とお伝えしましたね。

頻度もお伝えしました。

 

期間は頻度によって変わってきます。

頻度が多ければ期間は短くなってきます。

 

頻度を週5回ぐらいとしますと、24週間ぐらいで効果が出てくるといわれています。

その効果をしっかりとものにするには、23ヵ月は必要でしょうか。

 

もちろん効果の出方も個人差があります。

1回しただけで、その場でよくなる方もたくさんおられます。

逆になかなかよくならずに、1年以上かけてゆっくりと効果が出てくる方もおられます。

 

川平法の効果は積立貯金に似ています。

たくさんの金額を積み立てていけば、早く満期になります。

少しずつ積み立てていけば、ゆっくりと満期になります。

 

宝くじのように、一夜で大金持ちというわけにはいきません。

コツコツ貯めていきましょう。

⑤関節拘縮は川平法のじゃまになる?

川平法にとって大変なじゃまものがいます。

川平法がどうしても通じないのです。

 

そのじゃまものは、関節拘縮と呼ばれるものです。

人間の関節は動かさない状態がずっと続くと固まって動かなくなってしまいます。

機械の歯車がさびついて動かなくなってしまうようなものです。

 

こうなると川平法は通じません。

どんなに神経をつないでも、筋肉を収縮させても、関節は動きません。

関節が動かないということは、運動がおこらないということです。

 

おこらない運動を脳は学習できません。

したがって神経回路の強化はまったくできません。

 

川平法を行う前提条件として関節がやわらかく動くということが、とても大切です。

 

みなさん、常に関節をやわらかく保つようにしてください。

 

もしも不幸にも関節拘縮になってしまったら。

関節拘縮の治療を最優先してください。

⑥感覚麻痺は川平法のじゃまになる?

関節拘縮は川平法のじゃまになります。

 

じゃあ感覚麻痺はじゃまになるでしょうか。

 

「手足を動かしていても、動かした感じ、動いた感じがまったくわからない。」

「まるで他人の手足のようだ。」

 

どうでしょう?

 

じゃましているように思えます。

 

ところが、川平法の純粋な目的を考えれば、感覚麻痺はあまりじゃまにはなりません。

 

動いた感じがわからなくても思うように動けばよいのです。

 

動いたかどうかは、目で確かめればよいのです。

 

そうして動いてるうちに、なんとなく、どこかが、感じてくれてくるはずです。

 

健康な方は、まったく感覚のない箸で食べ物がやわらかいか、硬いかわかるでしょう。

 

まず思いどおりに動くようになるのが先決です。

⑦川平法と片麻痺になってからの経過年数との関係は?

脳卒中片麻痺の場合、手足の麻痺の回復は6ヵ月の壁ということがいわれています。

病気になってから6ヵ月以上経過すると、手足の麻痺の回復は止まりますよ、ということです。

 

川平法では、その6ヵ月の壁を越えることができます。

 

というか、6ヵ月の壁を越えることができなかったのは、従来の治療法なのです。

 

川平法は今までやってそうでだれもやっていない治療法なので、壁を越えることができるようです。

 

実際に、脳卒中になってから23年経過された方がよくなっています。

 

10年以上経過されててもよくなった方もいます。

 

ただし、あくまでも個人差があります。

 

そしていくら壁を越えれるといっても、6ヵ月以内に治療を行うことが最善であることは言うまでもありません。

 

⑧川平法をおこなう直前はどうしてたらいい?

川平法を行う前、患者さんはどうされていますか。

 

川平法の前はちょっとおとなしく安静にしておくことをお勧めします。

 

その理由ですが

 

川平法をおこなう直前まで歩いていたり、健側の手で何か用事をしていたとしましょう。

そうすると麻痺側の手足の筋肉が少し硬くなっていると思います。

筋肉は力を入れて使ったあとは少し硬くなります。

脳卒中片麻痺の方はなおさらです。

 

麻痺側だけではなく、健側の手足に力を入れても麻痺側の手足が硬くなります。

れを連合反応といいます。

 

川平法をおこなう直前まで動いていると筋肉が硬くなっています。

 

これは川平法を実施するのに妨げになります。

 

うまく動きませんし、学習効果も下がります。

 

ですから川平法を始める前に、坐るか、横になってちょっと安静にしましょう。

 

硬くなってしまった筋肉が緩む時間を与えてあげましょう。

35分ほどで構いません。

筋肉が緩んでから川平法を始めましょう。

 

どうせ行うなら、いいコンディションで治療しましょう。

いいコンディションでいい治療を。

⑨川平法をおこなう前には温めた方がよい?

「いいコンディションでいい治療を」

 

川平法の開発者の川平和美先生がおっしゃっていることばです。

 

具体的な例でいえば、振動療法(バイブレーター)であったり、電機刺激療法(低周波)であったりです。

 

そのほかに、手足を温めておくということがあります。

 

筋肉は冷えると硬くなってしまいます。

筋が硬くなってしまうとスムーズに動かすことができません。

スムーズに動かすことができなければ、スムーズな運動を学習することができません。

川平法の効果が悪くなります。

 

神経も冷えると反応が悪くなります。

脳からの命令がますます筋肉に伝わりにくくなります。

これも川平法の効果が落ちます。

 

ですから、手足が冷えている状態で川平法を行うとちょっと損をします。

 

特に冬の季節。

 

もしご自宅で川平法を実施するなら、外出から戻ってすぐ行うのではなく、暖房で十分に手足が温まってから行う方がよいでしょう。

 

お風呂上りなんかも、絶好のチャンスです。

 

きっとよい効果が得られますよ。

⑩作業療法の物品操作訓練は必要か?

川平法は脳の可塑性を利用した運動学習です。

 

あくまでも機能的な運動を学習します。

 

目的動作そのものを学習しているわけではありません。

 

ですから、運動と動作の間に乖離が生じることがあります。

 

特に上肢ではよく見られます。

 

例えば、肘の屈曲、肩の挙上などの運動が単独でできても、自分の顔を触るというような目的動作はできなかったりします。

 

自分の顔を触るという動作で、どんな運動を使ったらよいかわからないのです。

 

ですから自分の顔を触るという動作自体の練習が必要です。

 

その練習の代表が作業療法における物品操作訓練です。

 

この物品操作訓練をおこなうことなく獲得した新たな運動を目的動作の中で自然とできる方もおられます。

 

しかし、物品操作訓練をおこなったほうが近道であることはまちがいありませんし、自然にできる方のほうが少ないように思えます。

 

川平法で新たな運動ができるようになったら、ぜひ作業療法の物品操作訓練を受けてみてください。

 

もっと麻痺側の手が使えるようになりますよ。